Short Storys

□風花
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 あ〜。失敗した…。
 あれ、絶対風花ちゃん変だと思ったよ…。

 僕はいつものようにマイホームに登り、自己反省会中。
 内容は保健室前での一件。

『何やってんのよ。早く入りなさいよ』
 保健室の扉の前で固まった僕に投げつけられる、風花ちゃんの言葉。
 僕は曖昧に笑った。
『あ〜。僕はここでいいや。風花ちゃんこの人運んでよ』
 僕の言葉に風花ちゃんが顔をしかめる。
『は? あんたか弱い私にタケを運ばせる気?』
 か弱くなんてないと思うけど…
『いいじゃん。もう目の前なんだから』
 僕は苦笑いしながら、風花ちゃんにタケと呼ばれる男子生徒を押しつけた。
『ごめん。悪いけど、お願い!』
『ちょ、ちょっと…』
 僕は風花ちゃんの方を振り返らずに、その場から逃げだした。

 はぁ〜。
 僕は深く深くため息を吐く。
 だって、保健室の先生になんて説明するのさ。
 それに、風花ちゃんにも僕が人間じゃないことが知られちゃう。
 それは絶対嫌だったんだもん。


 僕が何度目か分からないため息を吐いたとき、それは起こった。
 
―ガシャン! 
 
 突然の大きな音。
 僕はびっくりしてその音のした方を見た。
 そこに居たのは、さっき保健室へと運んだ男子生徒。
 え〜と、風花ちゃんはタケとか言ってたっけ。
 そのタケちゃんは、不機嫌絶好調の顔をして歩いてる。背後には、八つ当たりしたであろう自転車が駐輪場から飛び出していた。

 何? 何であんなに不機嫌なの?
 不機嫌に歩くタケちゃんを見つめる。
 タケちゃんは僕の下まで来ると、ピタリと立ち止まった。
 そして顔を上げる。
 眩しそうに片手を顔の上にかざす。
 タケちゃんは僕の影に入りながら、見上げる。すると、その表情が、次第に曇り始めた。
 タケちゃんは無言で同じ所をじっと見つめると、僕に登り始める。ある枝の近くまで行くと、枝を真剣な顔で見始めた。しばらくすると、キョロキョロとあたりを見回す。僕の居るあたりも見たけど、彼は気付いた様子もなかった。
「ここだけか…」
 タケちゃんは僕の枝を撫でると、そこからヒラリと飛び降りた。スタンと綺麗に着地する。
 おお。すごいなぁ。やっぱり運動神経抜群なんだね。
 タケちゃんがもう一度僕の方を振り返り、仰ぎ見た。そして踵を返すと校舎内に入って行った。
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