Short Storys

□風花
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 僕は今日もマイホームの上から、みんなのことを観察中。
 
 僕の側の体育館では、みんなバレーボールの真っ最中。もうすぐバレーボール大会の時期だからね。

 この学校では、春に親睦を深めるためにクラス対抗でバレーボール大会をするんだ。この学校7組まであるから、かなり大変だけど…。
 だから、新学期始まってからの体育の授業は全部バレーボール。好きな子はいいだろうけど、苦手な子は苦だよね。
 風花ちゃんは体育がめんどくさくてヤダって言ってたけど。
 
 というかこの人、さっきからここで寝てるけど大丈夫なのかな?
 僕はチラリと目線を下に向ける。
 僕がいる所より下の段の枝には、この学校の制服着た男の子。
う〜ん。男の子っていうのはちょっと語弊あるかな。
 もうお兄ちゃんって感じだから。
 黒い髪に日に焼けた肌、僕に寄りかかって寝てるから良く分からないけど、背も高そうだ。
 ふっらふっらしてるけど、落ちたりしないでよね〜。

 僕は視線を校舎の方に向けた。
 校舎でも今は授業の真っ最中。
 みんな授業ちゃんと聞いてて偉いなぁ…って居眠りしてる人いる…。
 風花ちゃんのクラスは…今は古文の時間みたい。
 風花ちゃんは窓際の一番後ろの席。昼寝ベストポジションだ。でも、風花ちゃんは寝たりせず、前を向いている。
 と、こっち見た?
 僕は見えないように隠れた。
 そーっと葉っぱの間から覗いてみる。
 やっぱりこっち向いてる。
 あれ? でもなんか違うな。僕じゃなくてもうちょっと下に視線が行ってる?
 僕は彼女の視線を追ってみた。
 そこにはさっきの男子生徒。
 …まだ寝てる。
 もうすぐ授業終わっちゃうよ〜?
 って、船漕ぎがさっきより激しいんですけど!?

―ドサッ

 あ〜あ、だから言わんこっちゃない。結構高い位置から落ちたよ〜。
 風花ちゃんに視線を向けると頭を抱えていた。

 うわ〜痛そう。
 あれ? 起き上がらないよ?
 落ちてから起き上がろうとしないその人に不安になって、僕も枝を蹴って降りる。
 地面にストンと着地。
 いえ〜い。十点。
 こう見えても僕って身軽なんだよね。
 …ちょっとドジなだけで。

 それどころじゃなかった。
 僕はクリンと振り返って、足元に倒れてる男子生徒を見た。
 大丈夫ですか〜。
 とりあえず傍に寄って声をかけてみる。

 …無反応。
 当然か。僕の声人には聞こえないもんね。
 風花ちゃんと普通に話せて触れてることが変なだけで…何でできるのかな?
 やっぱり愛の力?

 あ。また脱線。
 この人にも触れたりするのかな?
 僕はしゃがんで男子生徒の方へと手を伸ばす。

 触れた。

 びっくり。
 僕は声をかけながら、ゆすってみた。
「う〜…ん」
 男子生徒は僕の手をうるさそうに払うと寝返りを打つ。
 この人…どんだけ寝るんだ!? 僕は唖然としてその人を見た。
 
 ふ〜ん。この人って…
 さっきまで顔が髪に隠れててわからなかったけど、男前だね。うん。男の僕から見ても男前。
 いいね。僕もこんな女顔よりこんな風な顔になりたかったよ。

 ってこの人このままにしておけないよね。
 運ばなきゃ。
 僕はあたりを見回す。
 誰もいない。校舎は…今は誰もこっち見てない。
 よし。僕が運ぼう。誰もいない授業中の今ならいけるはず。

 僕は彼の腕を掴んで起こすと身体の下に滑り込んだ。
 よっこいしょー。
 ちっ。おんぶも楽じゃないな。
 僕はふらつきながら、校舎の中へと足を踏み入れた。
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