Short Storys

□ネット☆らぶ
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―世界は争いごと一つ無く、人々は何百年と続く平和に酔いしれていた。

―異変は、ある日突然起こった。

―世界の最果て。

―人々が禁断の地と恐れるその場所は…

―闇に覆われると、一瞬の後にその姿を消した。

―文字通り、何も無かったかのように消えたのだ。

―その異変は、人々の住まう地でも起こり始めた。

―平和ボケしていた人々は、ようやく重い腰を上げた。

―世界の中心、輝ける場所エルレディオに、闇に対抗し得る人材の育成と派遣のため、学園を設立した。

―魔法学園ジュエルオーブを。


「…何々。このゲームは剣士、格闘士、魔導師、守護士、狩人のいずれかにプレイヤーがなり、学園で学びながら、依頼を消化していくシナリオ型RPGです。学園で己の道を極めるのも良し、ダンジョンに入り、宝を集めるのも良し、仲間とワイワイ騒ぐのも良し。楽しみ方は無限大です。…さぁ、私達とともに世界を闇から守りましょう」

 魔法学園ジュエルオーブは、最近学校で流行っている、RPGだ。
 流行り始めたきっかけは…う〜ん、よく覚えてないけど、確か学校でも目立っている人たちがこのゲームをしていて、そこから広まった感じかなぁ。
 広まるのは早かった。
 ほら皆、自分だけのけ者って嫌うじゃない。まぁ、私も人のこといえないんだけどさ。
 私と仲の良い子達もはまってて、休み時間にはずっとカチカチしてる。
 それを私は退屈に感じてたんだ…
 ここまではまるものなのかなぁっと、これを始めてみようと思った。
 
 でも、これは皆には内緒。

 だって、いままで興味無さ気だった私が、そんな理由で始めるなんて、恥かしいじゃない。
 …つまんない意地だけどさ。

「う〜ん、ちょっと難しそうかなぁ…。でも…面白そう♪」
 私は、『入学する』ボタンをポチっと押した。
 携帯の画面がオープニング画面に切り替わる。
 オープニングが終わると、マイメニューに移った。
 私はキャラクター名に『ユ〜ナ☆』と打ち込んだ。
 認証画面に移り、キャラクター選択画面に変わる。
「あ。あの名前通ったんだ。良かった。…何になろうかなぁ…やっぱ、魔法学園って付いてるし、魔導師?」
 私は魔導師を選んで決定を押した。
 それから一言メッセージなるものを打ち込む。

 マイメニューの登録も終わったけれど…
 次に何して良いのか分からんっ。
 とりあえず学園内をうろついてみる。
 通り過ぎるキャラクターの頭の上にキャラクター名がふよふよしていた。
 …みんないろんな名前つけてんなぁ…
 私は感心しながら、通り過ぎる。
 私なんて名前まんまだもん。後ろに☆入れてるけどさ。
 …って、私ってバレバレ?
 自分のネーミングセンスの無さに頭痛くなってきた。

 学園内の散策は続く。
 このゲームって、つくづく自由だよね。
 自由すぎて…ちょっと不安だよ。
 とりあえず校長先生なら何か知ってるかな〜。

 というわけで校長室。
 にこやかに微笑む爽やかハゲの前、私は出入りを繰り返す。
 さっきから同じセリフの繰り返し。
『君にはまだ依頼はきてないようだよ』
 ちっ。
 バカの一つ覚えか。
 私は自室の机の上に携帯をくの字に置いて、画面の中の爽やかハゲを睨みつける。
 なんかムカついてきた。
 私は画面のハゲを人差し指で弾いた。
 カチンッ
 音を立てて、倒れるハゲ。
 なんかスッキリしたかも。
 ふふんと鼻で笑う。
「おおっ」
 私はハゲの下のほうに『初心者の方へ(初心者マーク)』というリンクを見つけた。
 私はウキウキとそのボタンを押す。
 様々なQ&Aが並ぶ中、私は『攻略』を選ぶ。
 沢山のスレッドが並んでいた。
「…これ全部見るのは無理だろう…」
 私は途方に暮れる。
「あれ?これってまただ」
 とりあえずカチカチと画面を動かしていくと、同じ様なスレッドが何件も立っているのに気づいた。
『ギルド会員募集中』
 要約するとそんな感じだ。
 とりあえず開く。
 ギルドって何だ?
 首を傾げつつ読む。…だって、RPG初心者の私にはそんなのわかりませんよ〜。
 何件か読んで、なんとなく分かった。…このゲームでのチームみたいなものか?
 入ったがいいんじゃない?…てか、爽やかハゲに八つ当たりしてる暇あるなら、入っとけ。
 私の中の私が囁く。
 いえいえ。ハゲには大感謝ですよ?なんせこのリンクをさりげなく教えてくれたのですから。
 私は数あるギルドの中から、加入するギルドを真剣に吟味し始めた。

 今考えるとチョイ恥かしいけど、あのときの私は藁にもすがる気分だった。
 
 そうして選んで、選び抜いたあるギルド。
『joyfull!!』
 某ファミレスのパクリみたいだけど、内容が心惹かれるものだったので、ここに加入することにした。
『加入希望者はHPまで!』
 書き込んである、ギルドHPのアドレスをメモる。
 一旦、アクセスを中止するとHPのアドレスを打ち込んだ。
 
 BBSに初めましてのご挨拶を打ち込む。
「…え〜と、『はじめまして。ユ〜ナ☆です。初心者なので何にも分かりません。色々教えてください♪よろしくおねがいします(^0^)/』…こんなんでいいのかな…?ま、いいか、送信っ」
 私はHPをブックマークに登録すると、とりあえずお風呂に下りた。
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