ラムの市場
□桶と冷水【シン】
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「ちょっと!シンさん!?駄目ですってば!」
穏やかな波に揺られるシリウス号の中では、朝からヒロインの怒号が響き渡っていた。
「うるさい。何度言ったら分かるんだ!俺は大丈夫だ。」
二人の言い合いに驚いたみんなが、食堂から顔を覗かせている。
シンは、バツの悪そうな顔をすると、ヒロインの顔を一瞥して、そのまま食堂に入っていった。
「んだよ。朝から痴話げんかか?」
ニヤニヤと笑いながらいうハヤテをキッと睨むとシンは席に着いた。
「何かあったの?」
シンにくって掛かりそうになっているハヤテを静止すると、少し離れた席に座ったヒロインを見ながらソウシが声を掛けてきた。
「いえ。何もー。」
そう言って目線を外したシンだったが、ソウシが追求の目を向けているのを無視は出来なかった。
「何も無い・・・顔じゃないね?」
静かに、だが有無を言わさない様なソウシの迫力に、シンは『仕方が無い』と言った様子でため息をついた。
「ドクターに嘘は吐けませんね。・・・少し、熱があるようで・・・。」
観念した様に吐露したシンに静かに頷くと、ソウシはおでこや首元を触診していく。
「んー。確かに、熱がありそうだね。船長に話をしてみて今日は−。」
「コレぐらい、平気です!」
ソウシの言葉に、シンは声を荒げた。
熱のせいか、珍しく頬が朱色に染まっている。
「おー、どうした。朝っぱらから揉め事か?」
船員がその声の方に目線を向けると、欠伸をしながら食堂へ入って来るリュウガの姿があった。