短話

□路面凍結フィーバーwww
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子供っていうのは、


ずっと欲しかったおもちゃを買い与えられた時

後、お父さんやお母さんに褒めて貰った時など

まぁ、まだまだ沢山あるが、おもむろに喜びを表現する生き物である。






そんな子供たちが喜ぶ、天からの贈り物がある。






それは











雪。

辺り一面を銀世界に染め上げるそれは、子供でも魅力を感じざるを得ないのである。


まだ幼い子供たちは、空から降ってくる、白銀のプレゼントに心踊らせ、喜ぶのだ。








そう。












『子供の内は』


…………ね?
















「……………ゆ…き…?」


窓の外に目を向けて、絞り出すような声で呟く。


何それちょっと待って、聞いて無いよ。
ちょっと話と違うじゃないっ!!
……………別に誰かと話した訳じゃないけどっ!!



そりゃあね、確かに、目ェ覚める時にやけに寒いなーとか思ってたけどね?
思ってたよ?
えぇ思ってましたよ?




だからって…


「…………これは無い…。」


窓の外でふわふわ舞い踊る雪を見て呟いた。


外を見てみると、辺り一面銀世界。
真っ白な地面。はしゃぐ子供たち。



「………最悪だ…。」



うっかりいつも通りに起きてしまったではないか。
人はこれを定時と言うんじゃなかったっけか?


溜め息ばかりが溢れた。








そりゃあ確かにアレだ。

子供の頃は、雪が降ったらそりゃあテンションが上がった。
遊び捲りたくって、そりゃあフィーバーしたものだ。


だけどそれは所詮子供の頃の話。







高校に上がってから…というか、中学生ぐらいから、俺は知っている。


これは挑戦状なのだ。




銀世界からのコンクリートジャングルの住人たちへの挑戦状。




その名も






「…………路面凍結…。」




あぁ、白銀の
『無事に外出出来るのならしてみるが良いっ!!』
的なドヤ顔が見えそうだ。


なんて性格悪いんだ雪め。


見た目美人の性格ブスみたいだな。


「……面倒臭い……。」

雪の日に学校に行くなんて、そんな面倒臭い事をさせる学校は馬鹿だと思う。

そんな事を考えている俺が馬鹿だ。
嫌すぎてどうでも良い事ばかり考える。

そんな下らない事を考えている間も、時間は過ぎて行くだけである。



時計にチラリと目を向ける。




正直…

「……クゥちゃん起こすの…メンドいな…。」


ぶっちゃけ義務じゃねぇんだし、やんなくてよくね?

良いよね別に。
本人嫌がってるしさ。

これで遅刻したとか文句言われても知らねぇし。
それは俺のせいじゃない。


っていうか高校生なんだから、朝ぐらい自分で起きなさい。



うん。決めた。
今日はサボろう。





なんて独り言のようにぶつぶつ良いながら、ベッドの上で丸まって居ると、部屋の入り口から声を掛けられた。



「…あれ椎名、何で居んの?お前。」
「居ちゃ悪いですかね?親父様。」


相手を振り向かずに答える。
何故そんな疑問を口にする。
まだ家出る時間じゃないじゃん。

「どーでも良いけどよ、さっさと出ねぇと間に合わねぇぞ。俺は高校ん時にいつも通りに家出たら50分ぐらい遅刻した事がある。」
「それは些か遅刻し過ぎと違いますかね?何してたんだよ。」
「…銀世界のサバイバルだよ。」
「つまりは路面凍結と戦ってたって事ね。」


溜め息混じりに返事をして、再び窓の外を見つめる。


雪だ。まごうことなき雪だ。


「…………親父…」
「あ?」


窓に目を向けたまま呟く。










「…………今日…サボって良い?」
「寝惚けた事言ってっと、Yシャツ1枚で外に放り出すぞ。」





………やっぱり駄目みたいです。



 
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