短話
□そんな事もあるさ。
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「……………っ…。」
寝起きから、氷水をぶっかけられた気分です。
「………え……何で……?」
落ち着こう結月。
何だか混乱し過ぎて色んな物が溢れ返って来そうだが、とりあえず落ち着こう。
まず、
何でパパが此処に居るっ!?
…違うのか、何で俺は此処に居る?
100歩譲って、パパん家に居る所までは良しとしよう。
だが何故、高校生男児が、2人仲良く同じベッドで寝なくちゃいけないんでしょうか?
……仲良く?
いや仲良くって何だ。
妄想力豊かな方に注意書きしておきますが、俺ちゃんと服着てるから。
体の至る所が痛いとか、そういうの無いから。
本当にただ寝てただけです。
んだよ、文句は受け付けないぞ。
違うんだよ。
今はそんな事を考えたいんじゃないんだよ。
とりあえず、自分のズボンのポケットから、携帯を取り出して開く。
………午前4時26分。
何故こんな時間に目が覚める。
状況整理をしよう。
記憶を巡らせてみた。
5,6時間前、例の如く、清水が酒をどこからともなく持って来て、いつものように、いつもの面子でイチさん家で呑んだくれて騒いでいたのだ。
まぁ、この時点で分かる。
明らかに原因はそこだ。
午後10時過ぎ。
所々酔いつぶれてお開き。
「……結月、お前…白草連れて帰ってよ。」
「はぁ?何で俺?だったら釉樹寄越せ。」
「お前酒入るとウザさ増すな。駄目、雨宮は俺が送ってくから。」
「理由は?」
「お前に任せる方が危険。」
「だからって何でこいつ?」
そう言って、床に転がって爆睡してる白草の頭をわしゃわしゃした。
それを見ながら、溜め息混じりに答える一ノ宮。
「白草デカいじゃん。空夜とかお前とか、同じぐらいの奴しか運べないでしょ?」
「だったらクゥさんに頼めば良いだろ。」
「お前ねぇ…あんな酔っ払った変態エロ魔神が役に立つと思うか?」
「………………。」
何だか言い返せなくなって、舌打ちをした。
寝てる白草の胸ぐらを掴み上げて、叩き起こす。
「パぁ〜パ?そぉろそろ起きて来んないかなぁ?俺、帰れないんだけど。」
「…………ん…っ…」
苛立ちを込めた声で言い放つと、白草はうっすら目を開けた。
意識が3分の1ぐらい覚醒したようだ。
一ノ宮に目を向ける。
「…ところでさぁ、イチさん、」
「何。」
「まさか、俺にタダでこんな事させんの?」
「……………お前ホント面倒臭ぇな。」
「………何か、あるでしょ…?」
はぁ…っ、と溜め息を吐かれる。
「………そういうのは…清水に言え。」
それを聞いてにやりと笑う。
未だにぽけ〜っとしてる白草を置いて、立ち上がる。
「…ほら、帰るよパパ。置いて行かれたくなかったら、さっさと来て。」
さっさと先を進む俺の後を、白草はフラフラとついて来た。
実はいつでも忍び込めるように、ちゃっかり作っておいた合鍵で、パパ宅の扉の鍵を開ける。
え?犯罪?
良いの。今更気にすんな。
あんまりにもフラフラしてるパパの腕を掴んで、ずかずか玄関を上がる。
ただ引っ張られるままについてくるパパ。
パパの部屋の扉を開けて、パパをぶん投げるようにして入れる。
バランスを崩しはしたが、倒れないパパ。
「………じゃ、…俺帰るから。」
そう言ってさっさと行こうとしたら、
パパに腕を掴まれて止まった。
「…………何。」
そのままぐいぐい引っ張ってくるパパ。
え、ちょっと、何この人、あんなフラフラ酔ってた癖に、力強い!!
引っ張られるままに部屋に連れ込まれて、ベッドの上に倒れ込むように座らされる。
「………ちょ、…な…っ!!」
言い返そうとしたら、パパがその上から、覆い被さるように、腰辺りに抱き着いて来た。
「……何…」
「……さむい……ねむい…」
そう言ってうとうとするパパ。
そんなパパの顎を掴んで、ぐいっと上を向かせる。
「………俺に…どうして欲しいわけ?…言ってごらん?」
我ながら、何だこのキャラは。
「……寒い……此処に居ろ…。」
こいつも何だこのキャラは。
アレだ。
パパは捨て犬なんだ。
まさしくそんな目をしている。
言うところ、俺は捨て犬を拾って来た子供のお父さん的な。
そんな気分。
そんな何かを訴えるような目に勝てる筈も無く。
「………仕方ないなぁ…。」
と笑った。
別にキュンっと来て、酔いがぶっ飛んだなんて事は無い。
断じて無い。