長話

□ep6
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「…周防くんっ!!あたしのメール見たのっ!?」








昼休みのチャイムが鳴った5,6秒後。
教室の後ろのドアがスパーンッという勢いで開かれた。

その勢い良く入って来た声に、振り返る前から、げんなりした顔を見せる周防。



「……はぁ……………見たよ。」
「じゃあ何で返事くれなかったのっ!?」
「………授業中だから…」
「嘘吐かないで下さいよ〜♪4限目が自習だって事は、調査済みなんですから。」

もう1人、ドアの影から姿を現した。

「別に嘘じゃねぇだろ。自習だって立派な授業の一環だ。…っていうか、何で俺が4限目にメール見たって分かったんだよ。」
「…ん〜……経験ですかねぇ。」
「周防くんなら、4限目まで気付かないかな〜…って。ねぇ?」
「はい♪」

突然やって来た、2人の男女は、顔を見合せて、さぞかし楽しそうに笑った。

それを見て、周防は溜め息を吐いた。

「………清水……三宅(みやけ)…お前らなぁ…」
「それよりどうよっ!!」

ニット帽に眼鏡が特徴的な女子。清水楓(しみずかえで)は眼鏡を光らせて、意見を求めた。

「……これか…?」

そう言って、周防は携帯を開いた。


「……お前にしちゃあ…少なくないか…?」
「いえね、今回ガードが堅くてですね。入手出来た情報はそれだけなんですよ。」

限りなく赤に近い赤茶色の髪の隙間から、灰色の瞳を細めて、三宅湊汰(みやけそうた)は残念そうに答えた。

同じように、清水は残念そうに溜め息混じりに答えた。


「写真も撮れなくってさ、隠し撮りすら出来ないの。」
「そりゃまた何で?」
「さっきも言ったでしょう?ガードが堅いんですよ。」
「…………ねぇ…何の話してんの?」


周防の後ろから、椎名が覗き込む。


「おや、これはこれは。西邦院の椎名さんじゃないですか。」
「やぁ、三宅くん。相変わらずニヤけた顔してるね。」
「これは生まれつきと、目が細いだけです。」
「生まれつきニヤけ顔って事よね、ニヤけくんっ!!」
「"三宅"ですぅ。清水さん、怒りますよぉ?」
「………で?…何の話?」
「「…今度の転校生っ!!」」

清水と三宅は声を揃えて言った。

「なぁ〜んか、今回の転校生は只者じゃない気がするのよね。」
「…お前、それ毎回言ってるだろ。」
「新聞部の勘よっ!!第六感で感じるのっ!!」
「それにぃ、今回は本当にマジかもしれないですよ?周防さんも一度会ってみれば分かりますって。」
「………なぁ〜んか…会いたくねぇな。」
「何?ビビってんの?周防くん。」
「怖いんですか?」

清水と三宅が含み笑いで周防に詰め寄る。

「…会った事もねぇのに、怖いもクソもねぇだろ。勘だよ。」
「成程。まぁ、そりゃそうですね。」
「………ねぇ…転校生ってどんな人?」
「あら、何?気になるの?椎名くん。」
「珍しいですね。」
「…何か、会話だけ聞いてたら、めっちゃ気になるじゃん。人の性だよ。」
「………俺…飲み物買って来るわ。」

周防は小銭片手に、その場を離れ始めた。


《待て、周防っ!!》


歌戯が周防の元に駆け寄った。


《私も行くっ!!》
「…良いのか?」
《何が?》
「理苑。」
《…あいつは私の保護者か。良いんだ。潰れてるから、そっとしておく。……それに…》
「ん?」
《…周防なら大丈夫だって、理苑が言ってたし。大丈夫だろ。》
「あ、そう。……まぁ、ならいっか。」


周防は理苑の方を振り返った。


「……理苑、歌戯借りてくぞ。」


理苑は机に突っ伏したまま、片手を上げて答えた。




 
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