長話

□ep3
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「…………お前…」
「ん〜?」
「………それ…大丈夫…か…?」

椎名は空夜の視線の先に、目線を落とした。

そして、小さく笑った。


「………やだな、クゥちゃん。……何年前の話してんのさ。」
「……いや…」
「君が気にする事じゃないよ。それに、俺は君以上に、君に傷作ってんだから。」
「……………。」
「君の身体に着いてる傷は、ぜ〜んぶ俺が着けたんだよ?」

空夜の身体中に着けた傷痕を、椎名はじっと見詰めた。

「…………ぜ〜んぶ…俺のもの…。」

空夜が再び目線を寄越そうとした時、椎名は空夜の頭に、再びシャワーをぶっかけ、濯ぎ流した。

「…………ぶは…っ!!」
「…はい、終了♪」


空夜は濡れた前髪の隙間から、椎名を見上げた。
水が滴る。
目付きが悪いせいか、睨み付けているようにも見える。

「…………おう。」

椎名は口の両端を、にんまりと吊り上げて笑った。











「……何してんの?…あの2人。」

理苑は湯船に浸かりながら、空夜と椎名のやり取りを眺め、呟いた。

「…まぁ、見たまんまを言うなら『椎名が空夜の頭を洗ってやった』んじゃないか?」
「………何処ぞのカップルかっ!!」

理苑は湯槽を叩いた。

「…え、何、あいつらそういう関係?ごめん、知ってた。」
「違うだろーよ周防さんっ!!…じゃなくてっ!!…………つか、何で俺が弁解してんだっ!!」
「…まぁまぁ、冗談だって。少し落ち着け。」

理苑は息を1つ、大きく吐いた。

「…そりゃあ確かに、少なからず椎名は空夜にゾッコンだけど……………あいつのは、恋愛観とは違う物だって、本人が豪語してる。」
「…………『違う物』…ねぇ…。…………っていうか…俺には、空夜も相当だと思うけどな…。」

周防は湯船に頬杖を突いて、独り呟いた。


「……ったくよ……仲が良いんだか、悪いんだか。」
「…元々仲は良いんだよ。……見かけ上、仲が悪くて殺し合いをしなくちゃなんないだけ…。」
「家柄の関係上…か。」
「……ま、そういう事。歴代で重ねて来た事だしね。…そう簡単に背けられないんだよ。」
「…………。」

2人は椎名と空夜の姿を眺めていた。

「…………だからって……」


理苑は目頭を押さえて、目線を外した。







「監視の目が無い所で、イチャつくなっ!!」



本日2度目となる、湯槽叩きだった。


 
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