長話

□ep4『夢語-ユメガタリ-』
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「………この方法は…あんまりお薦め出来ないんだけどな〜…。」
「何?」








「夜更かし。」











最近、俺の夢見は大変よろしくない。
近頃頻繁にあの夢を見る。
夜寝る時も、ちょっと昼寝をする時もだ。

だから
『なんとか、夢を見ないでいられる方法は無いか』
と理苑に相談しに行ったのだ。










…思い出すだけで吐き気がする。














「お会計300円になります。」


夜更かし用として、眠気覚ましにホラー映画を3本借りた。

真夜中に1人でホラー映画って……。

俺は別にホラー映画が好きな訳でも無ければ、得意な訳でも無い。めっちゃヤバい映像が出れば、人並みにビビるし。寧ろ人一倍ビビってるかもしれない。情けない話だけどね。
でもまぁ、そうやって楽しんではいますけどね。


最近のDVDレンタル店は、一体何時までやっているんだろうか。




今日は木曜日で、時たまある100円セールだった。
だから思い切って3本借りてみたのだ。
ちょっと古めの、一時期ブームになってたホラー映画。
何で一昔前のホラー映画ってのは、地味に怖いんだろうか。
最新の技術を駆使した、最近のも『…おぉ…っ!!』ってなるけどね。
ホラー映画だったら、若干雑で、映像荒めのヤツの方が俺は好きだ。

案外昔から、夜中に1人でホラー映画鑑賞はやっていた。
適度に室内を薄暗くして、毛布にくるまって、ベッドの上で見る。
これがまた良い感じに不気味で、背筋がぞくぞくする。それがちょっと、堪らなく癖になる。

それを楽しんでいられるのは、やはり俺がドMだからなんだろうか。
え、っていうかホラー映画って、そうやって楽しむもんでしょ?

あ、ちなみに俺、自分がドMだっていう自覚はあるから。
だって楽しいんだもん。仕方無いじゃん?

特にクゥちゃんの暴力は大変好み。
まぁ、一歩間違えれば死んじゃうけどね。






なんて下らない事を考えていられる分、大分落ち着いて来たみたいだ。



なんて、第三者みたいな事を考えながら携帯を開く。
現在の時刻0時30分。
思ったより早く帰れたっぽい。








数年前だったら


駄目だったんだろうなぁ…。








俺は昔、精神のコントロールが不安定だった。







一度笑い出すと、3時間以上は狂ったように笑い続ける。
一度泣き出すと、喉が渇れて、これ以上涙出ませんってぐらい泣き続ける。
一度キレると、相手の意識がなくなって動かなくなっても、手を上げ続ける。



誰かに、動けなくなるまで無理矢理止めて貰わないと、止まらない。





それで、しばらく理苑の所でお世話になっていた。


俺は元々、かなり内気で、かなりの泣き虫だった。
ある日を境に、一気に狂いだした。

そんな頃から、理苑は助けてくれていた。


だからだという事もあると思う。
俺は昔から、理苑に結構な信頼感を寄せている。
今回の事だって、理苑だから話したようなものだ。
こんな話信じてくれるのなんて、理苑ぐらいしかいない。
いや、周防とかだってきっと聞いてくれるだろうけど、
何故か

『理苑なら大丈夫』

という、全く根拠の無い自信がある。

実際、それに応えるかのように、理苑は相談に乗ってくれる。
それが、何て言うんだろうね……………酷く安心する。


自分自身、よく分からない気持ちだ。


今現在、人並みの生活を出来ているのは、奇跡だとすら感じる。










俺は、何かあるとすぐに決まってる公園に逃げる。

そこに何かある訳じゃないけれど、1番最初に思い付くのがそこなだけ。大して『思い出の場所』という訳でも無い。


だが、今回はそこへ行かず、直に理苑の家に行った。


理由はたった1つ。








クゥちゃんに

会うかもしれないから。






あいつは別に、今まで何回もあそこへ行っていた訳じゃない。
俺が逃げ込んでた今までは居なかった。

だから、今までだったら今回もそこへ行っていたかもしれない。


でも、この前のせいで、利用し辛くなった。




この前の満月の晩、俺はそこで彼と偶然会った。

その時間は凄く楽しくて

今でも思い出せる。





でも


もしかしたら



また、彼がそこに居るかもしれない。





何故か今は

会いたくなかった。








こんな時間に高校生が彷徨いてたら、補導されかね無いだろ。


とか思いつつ、夜道を歩く。
生憎、チャリンコはクゥちゃんに御臨終させられたので、移動手段は徒歩しかない。


イヤホンを耳に挿して、iPodの再生を押す。
いつもの聴き慣れた音楽が、耳を通して頭の中に入って来る。







頭の中に蘇る、

あの声を消したい。







聞きたく無い





思い出したく無い









周りの音が聞こえなくなる程まで、音量を上げた。













思い出すだけで吐き気がする…。


 
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