長話

□ep2 to ep3『狂愛』
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俺は、満月の夜に夢を見る。










「……何それ…ロマンチックだね。」

理苑が湯飲み片手に、冷めた目で俺を見た。

「そこだけ聞いてりゃあね。」
「ロマンチックとか、お前に1番似合わないよ、椎名。」
「酷いなぁ。」

俺は眉を寄せて苦笑した。

「だってロマンチストなドMってどうよ。どんなロマンを感じてる訳?」
「居たらどうすんだよ。ロマンチストなドM。」
「やだな〜。」

なんて苦笑している理苑を見ながら、ぼそりと呟く。

「……いっそロマンチックな方がマシだったなぁ…。」
「…何?」
「夢の中身は、ロマンチックなんかじゃないよ。」
「そんなに内容酷いの?え、グロい?エロい?キモい?ホラー?」
「……何でそういう方向に持って行くかな。」
「じゃあ何だよ。」

理苑に聞かれて、思い出すように、顎に手を添えて、天井を見上げる。

「……ん〜…どっちかって言うと…暗い?」
「あぁ〜…嫌だ。」

理苑は本当に嫌そうな顔で俺を見て来た。
何故お前にそんな顔を向けられなくてはいけないのか。

「…暗いっつーか…切ない?悲しい?苦しい?…みたいな?」
「…何、そのちょっと、乙女の片想いワード集みたいなの。どんな内容だし。」
「乙女とか止めて。考えないようにしてたのに。」
「無理だよ。だってお前乙女野郎じゃん。」

人が気にしている事を、こうもさらりと言われると、気恥ずかしい気持ちと、拍子抜けた気持ちが混ざり合う。

正直、微妙な気持ちだと思う。っていうか、気分悪い。

「……内容ねぇ…。」

俺は理苑の家の縁側から見える満月を見上げて、思い出すように言葉選んだ。

「………なんか…







…懐かしい…夢…?」
「え、何で疑問形?」
「俺は知らないし、覚えも無いけど…………なんて言うか…俺の記憶が覚えてる…みたいな?」
「…ふぅん?」

理苑は微妙な表情で相槌を返した。

「何その反応。つーか今のだけで分かったの?」
「……あぁ…なんとなぁ〜く…?」
「…………俺前から思ってたけど…理苑ってよく分かんないよね。」
「ハッハッハ、お前に言われたくねぇ。」
「ははは、酷いなぁ。」
俺は、大分前に理苑が出してくれた緑茶を啜って、月を見上げた。





……あぁ…


……今夜は、満月か…。



「………夢に…さ…」
「ん?」

俺は湯飲みに話し掛けるように、声を溢した。

「……夢にさ…男の人が出て来るんだよね…2人。」
「…うん。」
「……その内の1人は…俺…なんだけど……俺じゃない…っていうか…」
「…つまり?」
「……何て言うか…今は俺じゃない俺だったものの中から、俺が見てるっていうか…あ、実際夢の中で視界に入って登場しているのは1人であって、そう考えると、その夢に出て来る俺?は、カウントされなくなる訳なんだけど…っ!!」
「少し落ち着こう、椎名。説明が必死過ぎて、イマイチ何言ってんだか分かんない。」

どうやら必死になってたみたいで、言葉の後半辺りから、喋るスピードも上がっていたようで。
理苑は宥めるように、近付いてた俺の肩を押して、元の場所に座らせた。

気を落ち着ける為に、再びお茶を啜る。

「……ん〜…これは…俺の勝手な解釈に過ぎないんだけど…」

お茶を啜りながら呟く俺の話を、理苑は黙って聞いていた。

「…これは…多分……過去の…










……前世の…夢?みたいな?」
「…あぁ〜…その前世の自分の中からお前が同じ光景を見ていて、その前世の自分の、見て感じた事がリンクしていると?」
「大体そんな?」
「……何で前世の夢だって思うの?」
「……だって…俺の記憶が覚えてるんだもん。」

俺の返答に、理苑は首を傾げた。

「……でも…お前は覚えてない…つか、知らないんでしょ?」
「そうだよ?…つーか、俺の…『西邦院椎名』としての記憶じゃない事は確かなんだ。」
「………ん〜…。」
「……だって…夢の中に出てくるもう1人の人…知らないし。」
「…どんな人?」


 
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