頂きモノ

□ないしょ話をしよう
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耳にはいるのはあなたの優しい声だけ。

【ないしょ話をしよう】

目の前に繰り広げられるのは激しいボケとツッコミの漫才。
この二人はいつだってそうだ。ボケ担当の浅野啓吾は体を張った動作で私たちを笑いに誘う。彼がわざとなのか本気なのかはわからないが。ツッコミ担当の小島水色は浅野啓吾とは打って変わり冷静なツッコミを彼に返す。隣りの一護も時にとばっちりを受けて。私はそれが現世にきてから不思議で仕方なかった。
「なぁ、一護」
一護にしか聞こえぬようにこっそり話しかけた。一護が私の話を聞こうと背を少し屈めて耳を近付けてきた。
「あやつらはいつもああだが…本当に仲がよいのか?」
「ん?だから言いたいことが言えんじゃねーの?」
「そうか…」
今度は一護が私の耳に囁いた。私は耳を傾けた。
「まるで俺たちみたいじゃねー?」
耳を放し、一護の耳元に囁く。
「たわけ。私たちは恋人同士であって、漫才ではなかろう」
彼は顔を上げた。
「ま、そうだけど」
彼の眉間の皺が緩んだ。何をそんなに喜んでんだか。
ちょいちょいと小さく手招きされてまた何か言われるのかと思うと。フゥッと細い息が耳を刺激した。
「うっ…!」
変な声をあげてしまい思わず口を押さえた。当然みんな私を不思議な面持ちで見つめられた。私はその場をごまかし、必死で笑いを抑える一護をにらんだ。
「いつもいつも!貴様は!」
「くく…悪ぃ…」
小さな声で謝られ、頭を撫でられる。それだけで私は許してしまう。
「…今日だけだぞ」
こっそりとまた話して。彼は嬉しそうに微笑んだ。
「ああ」
耳奥に残る温かな声と吐息。くすぐったくて首を引っ込めた。
「莫迦者。くすぐったいわ」
「ルキア」
二人で囁きあった。いつのまにか浅野啓吾と小島水色の漫才は終わっていて。
自然と注目はこちらに集まる。私が囁き返そうと思ったら彼らと目があって。
「「あ」」
一護とその場で萎縮してしまった。
「あー。なんかあっついねー!ここだけ」
「朽木さぁぁーん!いつから一護とそんな仲に?!つか一護!お前抜け駆けか?ええ?」
「いちいちうるさいよ啓吾。それに二人はだいぶ前からできてたんだから。ねー?」
「ええ?!知らなかった…!!嘘だと言ってくれ!朽木さん!つーか人の背中を足蹴にするんじゃねぇ!」
私たちは顔を赤らめたまま何も言い返せなくて。
無意識って怖いと改めて思う。
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