頂きモノ

□匿名希望
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出来る事なら いっそ


AとかBとか記号で表されるくらいの






***


「一護!!待たせ――・・・。」



ルキアが朽木家の客間の一室の障子戸を開けると、だだっ広い部屋の中には
畳の目から少しズレた座布団と蓋つきの湯飲み茶碗だけがいた。

「・・・あやつ、何処に行ったのだ??」

予想はしていたが、退屈で我慢できず出て行ったのだろう。
床の間の大袈裟な掛け軸と、緊張感を強いられる物々しい生け花に睨まれて。
現世にはあまり無い種類の静寂に包まれ、ししおとしの音はわざとらしく聞こえて。

「だから現世で待っておれと言ったのに。」

言わんこっちゃ無い、と呆れながらもいかにもな行動で、ルキアは目尻を下げて笑った。


貴族と言うのは面倒なもので、理解しがたい慣わしやそれに伴う行事がある。
もちろん表立つのは兄である白哉だが、養子だろうとなんだろうとルキアも朽木の姓を名乗る身。
欠席は自分を迎え入れてくれた白哉にいらぬ迷惑をかける事になる。
ましてや今、彼女は現世でその大半の時間を過ごしている。
こんな時くらいきちっと役割を果たさねば、申し訳が立たないとルキアは思っていた。

とは言え特に流魂街出身の彼女にとっては毎度自分を値踏みされているような気がして、
居心地が悪い事この上ない。
ああいう立ち居振る舞いというのは、生活の中にあってこそ身に付くもの。
それとはかけ離れた現世の生活が身に沁みている今となっては、
何時ヘマをやらかすかと気が気でなかった。
プラス瀞霊廷中から『あの黒崎一護の』という眼で見られるのだ。
今や彼女はあのお騒がせ男とセットになっていた。
ただ養子になった時よりも、俄然注目度が高くなっている。
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