頂きモノ

□匿名希望
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ポツリポツリと雨が降り出し、あたり一面を灰色に染めた。
それでも休暇や買い物を楽しむ死神たちが、通りを賑やかにしていた。
釣られて赤い番傘が花のように彩っていた。
食欲をそそるいい匂いも、威勢のいい店主の掛け声も、雨になど消されはしない。
様式は違えど現世の商店街とそう変わらない営みに、暖かさを覚えながら。
その中に、先ほどの二人もいた。

一護は目深に傘を差し、顔が分からないようにしている。
ルキアはそれよりも低い位置で、身体ごとすっぽり傘に覆われていた。
番傘は彼女には大き過ぎる。子供が大人用の傘を差しているようにしか見えない。
それを指摘したら案の定機嫌が悪くなってしまったが、
一護が朽木家を出てからの経緯を説明すると彼女は笑いが止まらなくなっていた。
そして今度は一護がむくれていた。

「・・・で、十一番隊総出で必死に貴様を捕獲しようと躍起になっていた訳か。」
「・・・ったく剣八の野郎がよー・・・。」

先ほどの捕り物帳らしきものは正にそのもので。しかも標的は一護に他ならず。
ちょっと散歩に出ただけなのに、せっかくここにやって来た彼と一戦交えたいあの隊長の差し金で。
あまりに合点がいって、ルキアは可笑しくてしょうがなかった。

「此処でも大いに慕われて何よりではないか。」
「・・・嬉しくねぇよ。つか、こんな人混みの中にいたらまたすぐ見つかると思うんですけど?」
「貴様のように霊圧垂れ流しでは何処にいても同じだ。莫迦者。」

朽木邸までのルートは見事に塞がれていた。
正面突破は容易いが、如何せん今日は朽木邸の近くで騒動を起こしたくない。
木を隠すなら森の中、と、思い切って人混みに連れて来てみたが、なんせ此処にいる死神たちには
『オレンジ頭の死神』というものがあの一件以来伝説化している。
名だけ知られている自分とは違って、外見だけでも一発で分かられてしまうのは
さぞかし煩わしいことだろうとルキアは同情する。
しかしいい具合に雨が降り出したのでその頭を傘で隠すことに成功した。
これなら霊圧以外は街を歩く普通の死神、だ。
この霊圧を彼のものだとはっきり認識している者以外にはなんとか誤魔化せる。

「けっ。俺は霊圧隠して敵に近づくようなコソコソしたやり方は嫌いなんだよ。」
「・・・ほう。そんなに強いなら自慢の力で追って来れない様に叩きのめせばよかったであろう?
なのに居場所がばれないように防戦一方だったのは何処のどいつだ。」
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