頂きモノ

□匿名希望
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「―――・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・」


全部が同じにしか見えない瀞霊廷の壁。
無駄なものは一切存在せず、隠れる所すらロクに無い。
なのにここには存在しない電信柱の陰に潜むように、
上がった息を整えながら身を縮めて辺りを窺っている少年が一人。

そう遠くない距離で地鳴りのような地響きが感じ取れる。
それと男達の怒声。いくつかの塊が、四方八方に動き回っている。

「・・・しつけぇ・・・。」

追いかけっこなどやる趣味はないと言いたげに、掻かされてしまった額の汗を拭った。
デジャヴ、だ。何の因果でまたこんな風に逃げ回る羽目になってしまったんだか。

―――もう、不法侵入者じゃないんですけど。と心の中でごちる。

喉の渇きを覚え辺りを見回すと、帰り道が分からなくなっている事に気がついた。
闇雲に逃げ回っているうちに、方向を見失ってしまっていた。

しかしすぐ再び軽い地震のような振動を感じて。
近づいてくるような、でも微妙にずれているような・・・。
気配がどう動くのか窺おうと息を詰める。
ここで下手に動いて自分の位置を知らせてしまっでは元も子もない。

半ば呼吸するのを忘れているので鼓動が早くなる。
息苦しさと、緊張がピークに達する時――――――


「な〜にをやっておるのだ?貴様・・・。」
「ぬおわぁああっっっ!!!?」

背後からいきなり肩に手が置かれて、一護は変な声を上げて尻餅をついた。
よほど驚いたのか、後ろを取った人物こそ自身がこの世界に来ている理由の全てだというのに、
恨めし顔で睨むだけで声が出ない様だ。

「・・・挙動不審・・・。」
「・・・ルキア、おまっ・・・お前なぁ・・・!!」

いつの間に、と涙眼が訴える。
もう一度同じ質問をしようとルキアが口を開きかけると、
そう遠くない距離で漢達の声がした。

『今こっちの方から聞こえたぞ!!』
『急げ!!』

そういえばここに辿り着く間、壁や通路にいくつも真新しい傷がついていたのをルキアは目にしていた。
まるで捕り物でもしているようだ。
・・・旅禍?しかしそんなのは聞いていない。

「・・・なんだ?何かあったのか?!」
「・・・くそっ・・・!」
「わっ!!一護っっ!?」

ワケも分からぬまま一護に抱えられ、ルキアは朽木邸と反対方向に連れ去られた。
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