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□◆第六章 〜危機〜◆
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ルリ…約束を最期まで守ってやれなくてすまない…。

ボロミアが自分に向けられる矢から視線を外そうとはせずに…しかし心の内では覚悟を決めていた。

【ゴンドールの光よ…其方に渡すものがあります】

突然、脳裏にガラドリエルの言葉が蘇る。

数日前にロスロリアンを出立する際に彼女に渡されたのは布で出来た袋。

【其方を大切に思う気持がこめられたもの。その身に常に帯びておくよう】

ボロミアは胸元に入れたソレの上に手を置いた。暖かい何かが流れ込んでくるような気がする。

ギリリと弓が引かれる音がして彼は息を飲んだ。

ヒュンという音と同時にボロミアの目の前に光に包まれた人影が現れた。

それはボロミアの代わりに矢を受けるとフッと消えてしまう。

ハラリと紙切れのようなものが目の前に舞った。

何が起こったのか、目の前のウルク=ハイにもボロミア自身にも分からなかった。

虚をつかれたウルク=ハイだったがすぐに次の矢を番う。

立ち上がろうとするボロミアに向けて放った矢は再び突如として現れた人影に阻まれる。

立ち上がって剣を構えた彼にもう一矢。

イライラしたようにウルク=ハイはキバを剥き出して威嚇する。

ボロミアは剣の柄を両手で握り、ウルク=ハイに斬り掛かって行った。

相手も弓を捨て剣を抜いた。

カンッカンッとぶつかり合う金属音が響く。

だが、体力的にもタフさも敵が上回っていた。

負傷によるダメージもボロミアを不利にさせていた。

もみ合っているうちにウルク=ハイの拳が肩の矢傷に当たった。

思わず蹌踉け、背後の木に背を預けると痛みをこらえる。

目眩がした。
焦点の定まらない目にウルク=ハイがニヤリと笑ったのが見えた。

そして目の前で大きく振り上げられる剣。

『ボロミア様!』

頭の中に悲痛な叫び声がした。

その声に応えるように彼の手が無意識に構えを取り、素早く振り上げられる。

鈍い音がして確かな手ごたえがあった。

斬られて数歩後ずさった敵にそのままの勢いで続けて斬り込む。
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