Duranta
□◆第八章 出会◆
1ページ/7ページ
見張りの衛兵以外起きている者のいない早朝。
朝靄が深く視界は酷く制限されていた。
…これではモルドールの様子ばかりかオスギリアスの様子までも見えないな。
束の間の休息にミナス・ティリスを散歩していたファラミアは溜め息をつく。
そして東方に向けていた目を細めた。
その時、視界の隅に入った真っ黒い物が彼の目を引き付けた。
「?」
近付くとそれは…「人?」
物陰に積み上げられた荷物を椅子代わりにして白い服を来た人が寄りかかり座っていた。
ファラミアの目を引いたのはその黒髪。
一瞬死んでいるのか思った。
こんな時間にこんな場所にいることは尋常じゃない。
しかし、すぐに相手の体が呼吸のために僅かに動いていることに気付いた。
微かに寝息も聞こえて来る。
一体なんでこんなところに寝ているんだ?
さらに近付くと相手が若い女性であることに気付き、ファラミアはさらに驚く。
「何て無防備な」
彼は彼女を起こして小言の一つでも言おうと、手を伸ばしたが…
……その手がピタリと止まる。
長い艶やかな黒い髪は肩から細い体を滝のように伝い…
白磁の肌は透き通るようで、長いまつ毛がその柔らかそうな頬に薄い影を落としている。
薄い紅色の唇は僅かに開いて…