Duranta
□◆第六章 砦◆
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ヘルム渓谷への道すがら二人はウルク=ハイの軍勢を目にした。
まるで黒い大地が蠢いているかのような大軍隊にルリは咄嗟にアラゴルンの腕を掴む。
「ルリ…今からでも遅くはない。どこか安全な…」
『もうどこへ行っても安全とは言えない…とそう仰ったのはアラゴルン様です』
「しかしだな…」
『時間がありません、アラゴルン様。参りましょう』
こうなったら彼女は梃子でも動かないだろう。
共に旅をしてきてアラゴルンは彼女の頑固さを十分知っていた。
深い溜め息をつくと、彼は仕方なく手綱をヘルム渓谷へと向ける。
角笛城についた二人は仲間達から何重もの歓迎を受けた。
ワーグと共に急流に飲まれたと思われていたアラゴルンの生還と…
必要に迫られたとはいえ護衛もなく旅の途中で置いて来たためずっと気がかりだったルリとの再会。
「ルリッ!」
『ギムリ?』
屈強で喜怒哀楽が激しいドワーフの戦士は、涙を流して二人の帰還を喜んでくれた。
「元気そうだな」
『ギムリも』