Duranta
□◆第二章 遭遇◆
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時たま方角を確認するために足を止めては空を見上げながら、草原をただひたすら歩き続けた。
この開けた視界ではオーク達に見つかれば隠れる場所などない。
ガラドリエルにもらったマントがその威力を発揮してくれるのを願うばかりだった。
分けてもらったパンもあっという間に食べ切り…
ルリはアラゴルンに習った旅の知識を総動員して何とか進んでいる状態である。
森の近くで小枝を集めてたき火を行っていたある夜。
本来なら木々を隠れ蓑にしてその中で休んだ方が安全なのだろう。
しかし、その森は深く重苦しい空気が流れていて身を隠して休む気にはなれなかった。
彼女がたき火の側で疲れ果てた足をマッサージしている時だった。
何かの物音がしてルリは立ち上がる。
オークだろうか?
それが馬の蹄だと気付いた時にはそれは彼女の目の前にまで来ていた。
ルリはフロドから話を聞いた黒騎手の話を思い出して身を竦ませる。
恐れおののく彼女だったが、想像に反してかけられたのは人の声。
「こんなところで何を?」
フードマントを深くかぶった男は馬上からそう尋ねると、答えを待たずに辺りを注意深く見る。
「供の者は?」
『いません。私…一人です』
警戒心から嘘をつこうとも思った。
しかし、どうせすぐにバレること。
ルリは男を見上げた。
小さなたき火の炎の明るさでは、男は真っ黒なシルエットでしかない。