Iris
□◆第七章 坑道◆
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モリアの壁の前でガンダルフは頭を悩ませていた。
イシルディンの扉を開くための暗号がわからないのだ。
一通りの合い言葉を試したが、扉はピクリとも動かない。
腕を組んでモリアの壁に寄りかかり、目を閉じていたルリはふと何かを感じて目を開けた。
辺りは月明かりで多少は明るいとはいえ視界は決して開けていない。
何かを探るように闇の中に目を凝らしていた彼女はピピンとメリーの側に歩み寄った。
そして退屈を紛らわせようと湖に石を投げ込んでいたメリーの手を掴む。
しかし次の瞬間、彼女同様に彼を制止しようとする手が伸びてきて、ルリはメリーごとその大きな手に掴まれる結果となった。
「『!』」
横を向くと相手も驚いて彼女を見ていた。
メリーとピピンが、何?というように見上げていることに気付いて、アラゴルンが慌てて言った。
「やめておけ、危険だ」
ちぇ〜と言うようにホビット達は不服そうに石を捨てたが、水面が怪しく揺れていることに気付いて不安気な顔になる。
ボロミアも警戒を強めて剣の柄に手をかけた。
「ところで…」
メリーが半眼になってアラゴルンを見る。
「手を繋ぎたいなら僕の手は必要ないんじゃないの?」
アラゴルンはハッと返ると慌てて掴んだままだったルリの手を離した。
彼が何か言う間もなくガンダルフのエルフ語に続いてイシルディンの扉が開く重い音が聞こえてきた。