Iris
□◆第五章 心境◆
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「エステル」
呼ばれてアラゴルンはいつの間にか隣で歩を進めるエルフに視線を向けた。
「いつも冷静な貴方にしては珍しく感情的に当たるね」
何の事だ?と眉を上げる彼に、美貌のエルフはフロドと話ながら歩くルリを示した。
「何が気に入らないの?」
「好き嫌いで反対したわけじゃない」
幾分、ムッとしたようなアラゴルン。
レゴラスは相変わらずのポーカーフェースでふぅんと呟いた。
そして彼が反対理由として上げた言葉を出してみる。
「ホビットじゃないから?」
「それもある」
アラゴルンは一瞬視線を地面に落とし、すぐにルリの背に向けた。
「ホビットをそう多く知っているわけではないが、彼らは素朴で裏表のない種族だ。謀などから一番縁のない種族…」
「人間と違ってね」
そうだ…とアラゴルンは即答する。
「彼らは純粋にフロドを心配して旅に同行しているのだろう。だが…」
「ルイは人間…」
「ホビットほど簡単に信じるのは難しい。…不自然な点もある」
「例えば?」