Iris

□◆第二章 襲撃◆
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裂け谷に向けて出発した一行は、湿地や寒さなどに悩まされながらもナズグル達に襲われることもなくアムンスールの見張り台まで到達した。

「今夜はここで野宿だ」

ストライダーの言葉にルリやホビット達はホッと息をつくと小高い丘を見上げた。

雨風に晒され崩れかけた見張り台が夕日に照らされている。

身を隠す程度にしかならないその場所に彼らは上って行った。

「これを持っていろ」

眼下を不安げに眺めていたフロドがストライダーの言葉に振り返ると、彼はホビット達に短剣を渡していた。

そしてルリに後を任せて自らは見回りに出掛けて行く。






─不思議な男だな。

ストライダーは辺りを注意深く見回しながら、ホビット達と共にいる青年を思い出していた。

エルフにも間違われそうな美しい容姿だが、繊細な外見に反して剣の扱いは妙に手慣れている。

旅にも慣れているようで旅に有利な細々とした知識は持っているらしい。

記憶を失っていても体が覚えているのだろうか?

自分を警戒して距離を取っているかと思えば、指示には忠実に従って信頼してくれているようにも取れる。

ホビット達と無邪気に戯れついているかと思えば、ふいに誰も寄せ付けない雰囲気になる。

もっと時間が経てば分かるんだろう…。

ストライダーはそう結論付けると、見回りに集中し直した。


 
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