Verbena
□◆第十六章 誓い◆
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馬鍬谷─ローハン軍とドゥネダインの一行はここで野営の陣を構えた。
『レゴラス様…』
テントの外の積み上げられた荷の上に腰を下ろして武器の手入れをしていたレゴラスは顔を上げた。
「落ち着かないみたいだな」
不安気な表情のルリ。
『隣に座ってもよろしいですか?』
もちろん…とレゴラスは微笑んだ。
『山の方から不吉な風を感じます』
「あそこは死者の道へ繋がっている…裏切り者の魂がいる方へ…」
だから人も馬も落ち着かない気にさせる。
『……裏切り者…』
ルリに視線を移したレゴラスは握りしめられた彼女の手が微かに震えていることに気付いた。
「怖いか?」
ビクッとルリの肩が震えた。
『い…いいえ』
その精一杯の強がりにクスリと笑みがもれる。
彼女の膝の上の手にそっと手を重ねると、元気を出せと言わんばかりにキュッと握りしめた。
ハッと顔を上げた彼女はレゴラスの端正な顔が思いのほか近くにあることに驚いて頬を染める。