Verbena
□◆第十三章 離脱◆
3ページ/4ページ
ルリは悲し気な顔をしたが、慌ててその表情を消すとレゴラスの前に立った。
「気分は?」
彼女は微笑んで頷いた。『大丈夫です』
「顔色が良くないな」
レゴラスはつぅと彼女の頬を手の甲でなでる。
ルリはドギマギして思わず視線を落とした。
頬が紅潮するのが自分でも分かる。
『私のことは心配いりません。それよりレゴラス様もくれぐれもお気をつけて』
「大丈夫。昨日約束しただろう、すぐに戻る」
レゴラスは暖かい光を浮かべてジッとルリを見つめ続けている。
「レゴラス、出発するぞ」
少し苛ついたアラゴルンの声と共にホビット達もレゴラスの服を引っ張る。
レゴラスは何か言いたそうにしていたが、諦めの息をつくとルリから離れかけた。
その様子にアラゴルンとホビット達が安心して船に向き直った。
その時、不意打ちとばかりにレゴラスはルリを抱きしめる。
『!?』
あ”ーーと何とも言えない叫び声が周りからあがったが、レゴラスはどこ吹く風。
「エステルの感触を貴女に残しておいてほしくないのでね」
真っ赤になったルリの耳元にそう囁くとレゴラスは非難の視線を受けながらも身軽に船に乗り込む。
『どうか…お気をつけて』
ガラドリエル初めロスロリアンのエルフ、そしてルリに見送られて指輪の仲間達は川を下って行った。