Verbena
□◆第十三章 離脱◆
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「ルリ…僕は……」
こちらも不安で顔色が優れないフロドをルリは膝をつくと抱き寄せた。
いつもは下に見るフロドの顔を逆に見上げて彼女は微笑んでみせる。
『何か不安だったり迷ったりした時、それを心に仕舞い込まずに口にしてください。私に話かけるようにして。誰も聞いてなくても動物達が知れば必ず私の元に伝わるから』
「うん…そうするよ」
フロドも彼女をキュッと抱き返した。
ルリは立ち上がると、次々と挨拶をすませていく自分を見守っているアラゴルンに向き直った。
『エステル様』
幼馴染みのような兄のような存在にルリは両手を伸ばした。
『無茶はなさいませんように』
「この旅にコッソリと後をつけてきたお前に言われたくはないな」
ルリを抱きしめながらアラゴルンは茶化した。
泣き出しそうな彼女を気遣っての言葉だろう。
「体を癒したら西へ向かう船に乗るんだぞ」
『…………』
「いいな」
アラゴルンは答えないルリに念を押すと、彼女の反論は聞くつもりはないらしくあっさりと抱擁を解いた。