Verbena
□◆第九章 坑道◆
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「まるで墓場だ…」
その光景に誰もが絶句する。
想像に反して辺りはドワーフの躯が散乱していた。
転がっている矢を手に取ったレゴラスが低く呻く。「オークだ」
全員が瞬時に戦闘態勢を取りながら後退りする。
辺りは静まり返っていたが、その闇に敵が息を潜めているとも限らない。
生まれて初めて見る惨状にルリは呆然と立ちすくんでいた。
「ルリッ」
弓を構えつつレゴラスが呼び、彼女はようやく我に返った。
慌てて皆の元に駆け寄るとレゴラス同様、矢を弓に番う。
彼らの注意は完全にモリアの中へと向けられていた。
その背後から不気味な影がフロドに忍び寄っていることなど気付かずに…。
「アラゴルン!」
サムの悲痛な叫びに振り返ると、最後尾にいたフロドが湖から伸びてくる無数の触手に捕らえられたところだった。
「ルリ、頭を狙え!」
レゴラスの指示でルリは力一杯弓を引き絞った。
レゴラスほどの腕はなくとも彼女もエルフ。その腕は確かだった。
彼女の矢がレゴラスの射ったそれと寸分狂わぬ位置に命中し見事化け物の頭を捉える。
ひるんだ相手の触手をアラゴルンが叩き切る。
ボロミアが落ちて来たフロドを見事に受け止めた。