Verbena
□◆第一章 疑惑◆
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「アルウェン…残念だが、その子は私の娘だよ」
グロールフィンデルが楽しそうに笑いながら本を手に戻って来た。
「えぇ!?」
「でもエルロンドの娘ってことにしておいた方が面白かったかな?」
などと不穏なことを呟くグロールフィンデルをエルロンドは睨みつけた。
「貴方に娘がいたなんて初耳です」
アルウェンという名の絶世の美人は、彼とルリを見比べるように視線を移した。
「もちろん、本当の娘じゃないけどね。私が引き取ることにしたんだ」
「でしたら…」
アルウェン姫はルリの隣に腰を下ろした。
「父上、私達が引き取りましょう! その方が違和感なさそうですし!」
「は?」
威厳あるはずのエルロンドの顔が何とも間抜けなものになった。
「違和感なくす必要があるのか?」
という父の脱力しきった言葉をスルーして姫はルリの小さな体をギューっと抱きしめた。
「だってこんなに可愛いんですもの。妹にしたいわ!」
外見のおしとやかさとは相反して実にパワフルなお姫様のようだ。