Primula

□◆第七章 謝罪◆
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肘を付いて僅かばかり体を引きずった瞬間、強引に腕を掴まれて抱き上げられベッドに戻される。

その行為にさえ痛みが伴ったが、今のルリは振り出しに戻された苛立ちの方が大きい。

顔を上げたルリは自分をベッドに下ろした人物を見て動きを止めた。

あの頃よりさらに逞しくなっているが、がっしりとした体格、金髪、鋭い眼光…間違いないエオメルだ。

彼の顔を見た瞬間、彼女の両方の目より涙が流れた。

─どうして来てくれなかったの? 助けてくれるって信じていたのに!─

ルリは心で叫びながらエオメルの厚い胸板を叩いた。

一度会ったきりの人間にここまで頼り、勝手に信じてそして裏切られたと思うのは、理不尽であり完全にエゴだということをルリも十分に分かっていた。

しかし、誰かにこの怒りと悲しみを向けないとやるせなさをぶつけないと、彼女の神経は破壊されてしまいそうだった。

エオメルはただ叩かれるままになっていた。

彼女の両方の拳が力なく落ちても彼は動かなかった。

嗚咽が途切れる時々にエオメルの「すまない」という呟きを何度も聞きながらルリは眠りに落ちた。



 
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