Duranta
□◆第六章 砦◆
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──「そんなにドワーフが珍しいか?」
裂け谷を出てからルリの視線はともすればがっしりとした種族の戦士の方へ向けられていた。
『あ…ごめんなさい…』
ルリはつい最近まで人間とオーク以外の種族を見たことがなかった。
エルフも視線を引き付ける端正な容姿を持っていたが、同行している弓の名手は感覚が鋭いらしい…
彼女の視線を敏感に感じとって視線を返してくるために気恥ずかしく見るのをやめてしまった。
ホビット達は出発までに散々彼女にまとわりついていた為に珍しさは薄らいでおり…。
結果…彼女の視線はギムリに向けられることになる。
「俺達は他の種族に積極的に関わる方じゃないからな…無理もないが…」
ギムリは気を悪くした様子もなくフンと鼻を鳴らした。
『すみません、ギムリ様』
ルリが謝ると彼はもの凄くギョッとした顔をした。
「【様】なんてつけるな、むず痒くて仕方ない」
ギムリは眉間に皺を寄せると、実際にかゆみが走っているかのように体を蠢かす。
『…でも…』
由緒正しいドワーフの血筋の彼に敬称をつけることはルリにとっては当然のことで…。
しかし、彼は頑として受け付けなかった。
「今後変な呼び方をしたら返事しないぞ」
一切な…と宣言されてしまう。
これにはルリも了承するしかない。