Duranta
□◆第二章 遭遇◆
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「殺されたのか?」
男の質問に一瞬考え込むルリ。
すぐに同行者のことを言ってることに気付いて答える。
『いいえ、最初から私一人で…』
きゅるる…とその時微かな音が聞こえてくる。
ルリは真っ赤になり、男が微かに笑うのが気配で分かった。
「そういえば腹が減ったな。ちょうどいい、食事にしよう」
男はヒラリと馬から下りると鞍に下げていた袋を手に焚き火の側にやってきた。
その袋の中からパンと日持ちするように薫製にされた肉、そして水の入った革袋をルリに差し出す。
焚き火の炎に照らされたその手が傷跡だらけなのにルリが驚いていると、彼の言葉が上からふってきた。
「薪が乏しいな。取ってくるから先に食事をしてくれ」
『…でも』
ルリが反論するより前に男は彼女の手に食料を押し付けると、あっという間に森の中へと姿を消す。
焚き火の側に腰を降ろすとルリは遠慮がちにパンを齧った。
何日ぶりかのちゃんとした食べ物。
もっともっとと要求する胃を何とか抑えて、ルリは必要最低限の量を取ると男の戻りを待った。
ほどなくして彼は両手いっぱいの枝を抱えて帰ってくる。