Iris
□◆プロローグ◆
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「で…でもやっぱり連れてはいけないよ」
『もう何を言っても無駄よ』
ドアの向こうから彼女の声がした。
フロドは振り返って他のホビット達を見た。
サムは困ったように眉を下げていて、メリーとピピンはひょいと肩をすくめてみせる。
フロドは彼女を思いとどませるためにマゴット爺さんの畑の近くで見かけた黒い騎手の恐ろしさを語って聞かせた。
聞いているのかいないのか返事はなく、ただドタバタとドアの向こうで音が続いている。
「と…とにかく、今にも追いつかれるかもしれないから、僕達はもう行くよ」
彼女の準備が終らないうちに出発してしまえばいいんだと、フロドは今更ながらに思いついた。
テーブルの三人に合図すると彼らは立ち上がる。
しかし彼らが一歩も動く間もなく…
『準備出来たわ』
声と共にドアが開いた。
振り返ったフロドの目がこれ以上はないほど見開かれる。
後ろの三人も驚いて口をあんぐりと開けた。
細身のズボンに長い上衣にマント、革製の手甲と足甲。
弓を背負い腰に剣をさしたその姿は、どう見ても青年だった。
もともと肉付きがあまり良くなく女性らしいとは言い難い体型も手伝って立派に青年として通用する外見に仕上がっている。
まぁ、男性としてはいささか美しすぎるようだったが。
『私の名はルイ』
これからは男のふりをするからよろしく…とルリ…いや、ルイはニッコリと笑った。
to be continued...