Verbena
□◆第二十一章 闇王◆
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『ギルドール…』
彼女の声が慈しむようにその名前を紡ぐ。
『エリアルが愛した者の名です。彼女の夫であった者の…』
ルリは目を細めてレゴラスを見つめた。
それは彼を通して別の誰かを見ているかのようなどこか虚ろな目。
『レゴラス様のように綺麗な金色の髪をしておりました。瞳はグレーで、とても優れた弓の名手でした』
彼女は話しながら視線を自分の手元に落とした。
『エルシオンに攫われた私を助けようと…命を落としました……彼も私のせいで…ギルドール…ごめんなさい…』
……【私】?
嗚咽混じりの声にレゴラスは慌ててルリの肩を掴んだ。
「大丈夫だ、貴女のせいではない」
抱きしめてその背をさすりながらレゴラスはガンダルフを振り返った。
「エリアルの記憶が混じって少々混乱しておるだけじゃ。大丈夫、直に落ち着く」
彼の言葉通りにすぐに落ち着きを取り戻したルリは恥ずかしそうにレゴラスの腕の中から体を起こした。