Verbena
□◆第二十一章 闇王◆
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「目が覚めたのか…」
ルリはレゴラスの手を借りて上体を起こした。
『エリアルは確かに王を受け入れることは拒否しました。ですが、完全に憎んでいたわけではないのです』
彼女は小さな吐息を漏らす。
『憎みきれなかったと言った方が正しいのかもしれません。彼女は大切に想っていた…偉大なる王を尊敬し敬愛の情を持っていました』
「ならばなぜ我が子に…」
『彼女は止めたかったんです、自分のために狂った彼の運命の歯車を。彼女はすでにサウロンの瘴気に当てられ長くは持たなかった』
禍々しい瘴気を近くに、純粋なエルフがどれほど生き永らえるというのか。
『だから、希望を自分の子供に託したのです。いつかエルシオンを止めて欲しいと』
そうして想いは私まで受け継がれました…とルリ。
「お前はなぜそこまで知っておる? そのような些細な記述はどこの書物に残っておらん。忌まわしいとされた王の名もどうして知っておったんじゃ?」
『私の中のエリアルの血が教えてくれました。エルシオンに斬られた時、彼女の記憶が私の中に…』
「ならば、ルリ。ギルドールという人物は…?」
レゴラスの言葉にルリは彼を見た。
右目は包帯で覆われ、左目だけが彼の視線を捉える。