Verbena
□◆第二十一章 闇王◆
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「…昔、偉大なエルフ王がいた。その力は群を抜いており、サウロンへ対抗する力の中心であった」
本当に偉大な王だったようじゃ…と魔法使いは繰り返した。
「王は強靭な精神の持ち主だったが、たった一つだけ弱点があった。叶わぬ恋をしていたのだ。決して手に入らない…手に入れてはいけない者を愛していた」
そこでガンダルフはルリに視を移す。レゴラスも彼の視線に釣られるようにして彼女を見つめた。
エルフ王は力があるが故に孤独で、そこをサウロンにつけ込まれたと言われている。
愛する者を手に入れたいという己の欲望に屈し、サウロンの甘言に乗せられその手を闇に染めた…とガンダルフは話を続けた。
「それが…エリアル?」
そうだ…とガンダルフは頷く。
「そうまでして手に入れた女性だったが、彼女の心までは彼のものにはならなかった。彼女は王を恨み、二人の間に出来た子供に呪いをかけ、やがて自身は悲観のうちにこの世を去ったと言われている…」
「………」
親が子に呪いをかけるなど…そうまでして彼女は彼の血が忌まわしかったのか…それほど彼女は王が憎かったのだろうか。
『それは違います、ミスランディア』
静かな声が魔法使いの言葉を否定した。