Verbena
□◆第十七章 血◆
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「ある偉大なるエルフ王の一人がサウロン側に寝返った」
拷問を受け身を裂かれてオークになり下がる者はいても、自ら闇へと身を投じるエルフは極めて珍しい。
「サウロンに抵抗していた彼の一族は、王の裏切りで根絶やしにされ…その裏切りの王を【闇に堕ちしエルフ】とそう呼ばれたんだ」
今ではその王の名前さえ忌まわしいものとされ記述されている書物はないが…とアラゴルンは呟いた。
「それがルリとどう関係があるんだ?」
「私がイシルドアの血を継いでいるように、ルリはそのエルフの血脈なのだろう」
「宿命ってのは?」
彼女が亡霊王に向かって言った自分の宿命。
多分、その血に関係してくるのだろうということはギムリにも分かった。
「そこまでは私も知らない…」
ギムリは俯くルリの背を見た。
「どんな宿命かは知らないが、あの細っこい肩に背負うのはちぃとばかし重そうだな」