Verbena
□◆第十六章 誓い◆
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ファラミアの一団に拉致されたフロド達はヘネス・アヌンに連れてこられていた。
が、元々土地勘がない上に目隠しをされていたため、ここがどこなのか彼はさっぱり分かっていなかったが…。
モルドールへ近付いているのか遠ざかっているのかさえ。
閉じ込められている部屋の小さな穴から辛うじて見える空をぼんやりと眺めていたフロドは、無意識に指輪に触れていた。
日に日に重くなる指輪。
果てしなく成功する望みの薄い旅。
全てが彼から気力を奪っているようだった。
「ルリ…僕はもう駄目かもしれない…」
先ほどボロミアの弟だという大将からもたらされた訃報。
…ボロミアまでもが命を落としたって。
他の旅の仲間はみんな無事なのだろうか…?
もしかしたらもうみんな…。
チチチ…と軽い鳴き声がしてフロドは思考を中断させた。
いつの間にか小さな鳥が彼の肩や頭に止まって、大丈夫?とでもいうようにしきりに小首を傾げている。
その可愛らしい姿にフロドの口に笑みが浮かんだ。
野生の鳥がここまで人に対して警戒心を持たないわけがない。
この鳥達は、ルリと繋がっている…そんな気がした。
フロドが手を差し出すと小鳥たちはトトトと指先まで上ってきて綺麗な声で囀った。
【元気を出して】と彼を励ますように…。
「そうだね、まだ望みが全て断たれたわけじゃない。諦めるのは早いか…もう少し頑張ってみるよ」
フロドはルリに話すように小鳥達に語りかけた。