Verbena
□◆第十三章 離脱◆
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用意された小舟を前に旅の仲間達は離脱するルリに挨拶しに来てくれた。
「傷を早く治してね」
メリーとピピンはそれぞれルリの左右の手をしっかりと…しかし傷に響かないように優しく握った。
「もっといっぱい食べて太らないと倒れてしまうぞ」
ギムリが言って思わず彼女が笑うとサムが真剣な顔で言った。
「ギムリの言う事も一理あります。ちゃんと栄養取らないと、体だって早く回復しませんよ」
ルリは微笑んで頷くと言われた通りにすること約束した。
それを聞いたサムは満足気に息をつく。
ルリは疲れた顔をしているボロミアに向き合う。
襲撃の心配もなくゆっくり休めたはずなのに彼の顔色は驚く程悪い。
『ボロミア様。どうかご自分を信じて、大切になさってください』
彼女の声にボロミアは力なく頷く。
ルリは彼に忍び寄る指輪の魔力を察していた。
しかし、彼にそれ以上かける言葉が見つからない。
指輪の忠告をすれば、それは彼が指輪の魔力に屈するかもしれないと疑っていることになってしまう。
彼を信じて祈るしかない。
「分かっている。貴女も体を労れよ」
彼自身猜疑心や不安に苛まれているのだとしても彼女を気遣う暖かさは忘れてはいなかった。
一瞬の沈黙の後、ボロミアは微笑むと彼女の頭を少し乱暴とも思える手つきで撫でる。
いつもの彼らしい仕草だった。
「ルリ…この先何があろうとも…己の信じた道を行くんだ」