Verbena
□◆第十二章 想い◆
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「ルリ」
低い静かな声がかけられ、彼女は顔を上げる前にそっと涙を拭いた。
「傷の具合は?」
彼女の涙に気付いたのか…その跡を隠すに十分な時間をおいてレゴラスはガラドリエルがそうしたように寝台の端に腰を下ろした。
『痛みはまだ少し…でも、大丈夫です』
彼は彼女を労る暖かい光を瞳に浮かべ、指でソッと拭い切れなかった涙を掬う。
「私達は明日出立するが、貴女はここでゆっくり静養するんだ」
気遣ってくれる優しい言葉にルリは付いて行きたいと我が儘を言いそうになる。
旅はこれからさらに過酷さを極めるだろう。
ならば想いの強さとは逆に、手傷を負っている自分が足手纏いになることは明白。
今の自分に出来る唯一のことは、黙って彼らを見送ることなのだ。
「…すまない」
辛そうな声色にルリは驚いてレゴラスを見た。
悲しそうに曇った瞳と綺麗な眉間に寄せられた皺。
どうして彼が謝らなければならないのか見当もつかず、ルリは彼の真意を推し量ることが出来ずに戸惑う。