Verbena
□◆第十章 戦◆
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ガンダルフが遺体が抱えていた日誌を読み上げる中、ルリは不安気に耳を澄ませていた。
遠くに聞こえる何かが蠢く音。
地中にいるはずの生物達もそれを恐れてここには寄り付かないのだろう。
カンゴンカンと乾いた音が突然鳴り響き、ルリは驚いて振り返った。
井戸の側でピピンが泣きそうな顔をしている。
反響音が収まると辺りはシンと静まり返り、特に変わった様子はなかった。
ホッとした空気の中、ガンダルフの叱りつける声。
しかし、すぐに彼らの安堵は早計だったことを知る。
遠くから太鼓の音が鳴り響いてきたのだ。
そのリズム的な音と奇声が徐々にこちらにむかってくる。
ボロミアが扉に駆け寄ると外の様子を伺った。
「トロルもいるぞ」
放たれた矢を避けつつ、ボロミアは扉を閉め、閂をかける。
「ルリ、下がっていろ」
彼女は言われた通り少し下がった。
そして前線に立つレゴラス達に従い、矢を弓に番い扉に向ける。
バキッドカッと扉を壊そうという音と奇声が聞こえてくる。
ルリは震えそうになる自分を必死に落ち着かせようとした。
心臓がうるさいくらいに鼓動を刻んでいる。
訓練は重ねてきた…しかし、実践ともなるとまた勝手は違うだろう。
怖くて…不安で仕方なかった。
「ルリ…」