Primula
□◆第二章 巫女◆
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「まったくちょっと目を離すとすぐに消えて! 巫女という自覚があるのかぇ?」
目の前に積み上げられたクッションに埋もれそうに座っている老婆。
一族の長老であるナジェは反省の色がまったく見えないルリにハァ〜〜〜と肺の中の空気をすべて吐き出す勢いで溜め息をつく。
「ナジェ様、巫女も反省していますから…」
ルリを連れて帰った男が言うと、老婆は鬱憤をはらすように今度は彼に噛み付いた。
「大体、カムイ、お前がいけないんだよ! ルリ一人ぐらいちゃんと監視しておきっ」
カムイは長老の八つ当たりに僅かに眉を上げたが、それ以外表情は変えなかった。
ルリが申し訳なさそうに眉尻を下げて彼を見ていると、ふいにカムイが彼女の方を振り返ったためバッチリ目が合ってしまう。
彼はナジェに気付かれないように『気にするな』と目配せすると、すぐに視線を今だ怒鳴っている長老へと戻した。
「ナジェ様、あまり興奮するとお体に触りますよ」
あまりにも冷静なカムイの声に毒気を抜けれたナジェはもう行って良いとばかりに手を振って二人を追い払った。
長老のテントを退出した二人は同時に溜め息をつき、それに気付くと顔を見合わせてクスクスと笑った。