First year
□◆第五章 飛行術◆
1ページ/3ページ
その日、ルリは朝から憂鬱だった。
飛行訓練も早くも4時間目を迎えたというのに、彼女の箒は一向に浮き上がってくれなかったのだ。
授業全般において落ちこぼれ気味なピーターでさえ、前回の授業で浮かぶことが出来たというのに。
今回の授業開始20分、最後までルリとビリを競っていたハッフルパフの男子生徒が見事宙に浮かぶことに成功する。
すると、付きっきりで教えてくれていた先生も彼女一人になったことでこれ以上遅れている生徒に合わせることが難しかったのか…匙を投げたのか…真相はどうであれ皆を指導するために空中に上がって行ってしまった。
『はぁ…』
ルリは楽しそうだったり怖々だったり、様々ながらも自由に飛んでいるクラスメート達を見上げた。
そして自分が跨いでいる箒を見下ろす。
『天空召喚 急々如…』
バコッ。
呪文は突然受けた後頭部の軽い衝撃により途切れた。
「何、ズルしてるんだよ」
頭を摩りながら恨めし気に振り返ると、シリウスが箒片手に苦笑している。
『だって飛べないんだもん』
「だからって…なんつったけ…そのシキ何とかっての使っちゃ訓練になんねぇだろう」
式神を使役しようとしたことはお見通しらしい。
『でも…』
「愚痴は後で聞く。いいから、練習するぞ」
シリウスはきっぱりと言った。