宝物

□飛沫真童様よりvV
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《ゆきうさぎ》





 真っ白な世界が広がる。
 見るもの。見るもの、すべてが白い世界。
 昨夜から降り続いていた雪がつもり、墨村家の中庭も銀世界が広がる。
 そんな美しい世界を前にして呆然と立ち尽くす親子。
「……………母さん。ここに良守がいるの?」
「うん………」
 頷く守美子に目を向けると、青い表情をしている。 正守が学校から帰ってくる1時間も前から、守美子は良守を探している。
 そう。つまり、また良守は行方不明になっている。
 昔、ぬいぐるみの中に良守が紛れて見つけるのに大変な思いをしたのもつかの間、またもや雪の中で良守が紛れて見えなくなる。
 何故、良守を見つけられないかと言うと……

「で……今日はどんな格好しているの?」
 呆れながら聞く正守に、守美子は苦く笑う。
「えへ。雪うさぎ……」
 雪うさぎとは、自分の身を守る為に雪と同色になる。
 つまり。良守は雪と同じ色をした着ぐるみを着ていると言う事だ。

 頭が痛くなる。

 思わず溜め息を付きたくなる正守と守美子の前に、白いモコモコしたのが通り過ぎる。
「良守!!!!」
 思わず大声で呼ぶ正守の声に、良守は振り替える。
「う?」
 振り替えった良守は、正守を見た瞬間。ぱぁと表情を明るくさせて、両手を広げて正守に向かって走って来る。
「にーた!!!!」
 抱き付いてくる良守を抱き上げながら正守は思った。
 正守の目の前を通って行きながら、まったく正守に気付かなかった良守。
―――…良守。何を追っていたの?
 考えてみたら、1時間も良守は何をしていたのか?
「良守。何をしていたの?」
 正守の問いに、良守は満面の笑みで答える。
「ゆきだるま」
「ゆきだるま?……」
 庭をよく見ると、所々に可愛らし雪だるまが見える。
 つまり。良守は正守が帰ってくるまで、雪だるまを作っていたのだ。
「あんね。あんね。あっち!!」
「あっち?」
 良守に言われるままに行くと、いくつか雪だるまが並んでいる。
 それを良守は自信満々に言う。
「これ。にーたで、こっちが、かーたで、そんで…」
 嬉しそうに言う良守だが、正守だと言っている雪だるまが1番、大きいのは愛ゆえなのか?
 にっこり微笑む正守の横で、ライバル心むき出しで正守を睨み付ける守美子がいたのは無視しよう。


END

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