宝物
□紀沙様よりvV
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ねえねえ。
そんな猫撫で声に、何か吐いた気がした。
バン!と屋上の重い鉄扉を強く閉めて息を整える。
妖交じり云々置いても、比較して人より体力はある方だからそれはすぐに整って
。
ずるりと引きずるようにして屋上の、その上の、給水タンクの側へと上がった。
第一、意味が分からない。
自分に向ける女の目と、声。
まるでばけねこ、ではないか、と考えた所で思考を邪魔をされた。
「おーい、志々尾ぉ」
「………、」
「しーしーおー」
「………………、」
「し、し、おー!」
「うるさい!」
「やっぱ起きてんじゃん」
「……、なんなんだお前は」
俺は今機嫌が悪い、寝るから声を掛けるな。そう言った所で聞き分ける奴ではな
い良守は。
すた、と軽く隣に上がってさっきの子、泣いてたよ。
知ったことか。
「志々尾って結構キチク?」
「っふざけるな、」
「だってさー、廊下のど真ん中で触るな煩い、て」
あれはひどいって。
だったら俺が悪いのか。
あの女のことは知ったことではないが、自分は気持ち悪い、と思っただけだ。そ
んな好意もなにも抱いてない知らない女に腕を抱かれ。
だから突き飛ばして逃げただけだ。
「だったら、」
「でも、」
「でもさ、嬉しい。志々尾は俺にだけ、優しいんだって思った」
俺だけ志々尾に触れていいんだ、て。
そう、遮る様に言ったのに視線は空を仰いでいる。照れるらしい。
「…俺はお前だけだから」
「ん、俺も」
限が言ったそれのには生きる、全ての意味が含まれている。
それを良守は分かっているのだろうか、手をぎゅ、と握って、嬉しそうに俺も志
々尾だけ、だからと視線を交わらせて言った。
隣にはいつも君を。
(体温を感じる、さあ手を)