宝物

□飛沫真童様よりvV
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《ピチピチ》


 熱い日差しが差し込にむ中で、一人、涼しげな表情で勉学に励む正守の姿があった。
 確かに、日中の気温は上がっているが、昔ながらの日本家屋で、それなりの広さもある。
 襖を風の通り道に合わせて開けているだけで、かなり涼しい風が流れてくる。
 現に、正守の髪も緩やかに揺れている。
 そんな昼下がりの時間帯に、父・修司が正守に声を掛ける。
「正守。良守を見て欲しいんだけど、いいかな」
「構わないけど。母さんは?」
 確か、良守と一緒になって庭にプールを作って水浴びをしているはずだが?そんな正守の疑問に、修司は苦い表情を浮かべる。
「………ダウンしたんだ…」
 苦く笑う父に、正守もつられて乾いた笑いを漏らす。
「ははははは…寝不足?」
「うん……」
 仕事が仕事だから、仕方がないとも言える。
「いいよ。父さんも締め切りで大変だろうから、オレが良守を見ているよ。」
「ごめんよ。正守、勉強していたのに」
「気にしなくても良いよ。ちょうどキリもいいし、オレも水浴びしたいか…」
 そう言って微笑む正守に、修司は感涙する。
「本当に助かるよ。ありがとう。正守」
 そう言って修司は、先に守美子と良守のもとに行く。
 正守は自分の部屋に行き海水パンツに着替えると、裏庭に向かう。
 そこには、程よい大きさの木があり。日中でも日陰になるので、いつも、そこでプールをしている。
 そこに向かった正守が見た風景は、きゃっきゃっと喜ぶ良守の声と、青い表情を浮かべている守美子と、心配そうに守美子を見ている修司の姿だった。
「母さん。良守はオレが見ているから休んでいて良いよ。」
「ごめ〜ん…助かる〜ぅ……」
 そう言いながら、修司に支えられながら家の中に入っていく両親を見送りながら、正守はプールを見て固まる。


 時々、本当は、母の趣味なんじゃないんだろうか?そんな疑問を抱きたくなる良守の格好は…
 ずばり『うる星やつら』のテンちゃんだ。
 雷小僧を連想させる海水パンツは、黄色と黒の横縞で、頭のてっぺんには、ヘヤーバンドで作られた1つ角がある。

 絶句する正守に、良守はきゃっきゃっ言いながら水を掛ける。
 その冷たさに、我に返った正守はプールに入り込むなり良守に水をチャバチャバと掛けてやる。
 きゃっきゃっと喜ぶ良守に、正守は言う。
「今度は大きくなったらラムちゃんの格好もしてくれよ。」
 そう正守が言うと、良守は元気よく返事をする。
「あい!!」



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