宝物
□ぴよ様よりvV
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限は耳まで赤くなりながら、そう答えると良守から目を逸らした。
そんな限に良守はクスッと笑うと、小椀をそっと受け取った。
ふんわりとした温かさが小椀から伝わってくる。
スプーンを取って林檎に差し込むと柔らかく煮込まれた林檎は難無くスプーンを受け入れた。
黄金色のスープと林檎を掬い取り、眺めると煮られたとはいえ、やはりかなりいびつで所々に皮が残っている。
口に含むと、とろりとした甘く温かなスープと甘い林檎の香りが広がり、一緒に独特の甘い香りも広がった。
咳で痛みがあった喉もその甘味で潤い、痛みがスゥッと引いていった。
「甘い…美味しい…」
甘い味と香りと温かさに、良守は顔を綻ばせた。
「そうか…」
途端に安堵したように息を吐き出し、肩の力が抜けた限を見て、良守はクスクス笑いながらまた林檎を救い取り口に運ぶ。
「ね、これに料理名あんの知ってた?」
「…知らねぇ」
パイの中身ぐらいにしか思っていなかった限は正直に首を振る。
良守は嬉しそうにそれを口に運びながら答えた。
「コンポートって言うんだぜ。果物の砂糖煮って意味だけど、外国じゃ風邪ひいた時に食べさせたりする所もあんだって。…ついでにさ、限、匂いだけで入れたんだろうけど、香辛料のシナモンも風邪引いた時にお茶にして飲ませる物なんだぜ」
スプーンの先を口に含み、良守は笑った。
「ありがとう限、今の俺にぴったりな料理だよ。…限が初めて俺に作ってくれた料理、すごく美味しい」
熱以外で頬を赤く染め、目を潤ませる良守に、限は恥ずかしそうに頭を掻いた。
清涼感のある甘さが漂う、午後の一時。
それから甘い香りと記憶は、ふとした時に訪れては、二人に無意識に何度も再現させていく事になった。
End