いとしいあなたに幸福を
□03 雲翳-うんえい-
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本音を言えば父を捜し出して、逢ってみたいと思ったが――きっと母はこの機会を逃したら話をしてくれないかも知れない。
だから意を決して頷くと、厘も観念したかのように目を伏せた。
「…お前の父親は秋雨出身の、お前と同じ髪色をした青年よ。私より十六も歳下の…ね」
母と十六歳差。
ということは存命なら今年で四十二になる。
そして、白金の髪は確かに秋雨の国の人間に見られる特徴だ。
「驚いた?」
「…多少」
自嘲げに笑う厘に、周は言葉を濁した。
意外と言えば意外と思えるし、然して驚きを感じていないようにも思える。
何だか不思議な感じがした。
自身の髪色に関して、以前から憶測を巡らせていたためだろうか。
「気の弱い、お人好しよ。こんな歳上相手に誑(たぶら)かされて、騙されてしまうのだからね」
「誑かす、って…」
「相手は、私を春雷の領主とは知らなかったの。だから最後まで私の素性もお前を授かったことも、何も教えはしなかった。…本当は気付かない振りをしてくれていたのかも知れないけど」
周は、何となく相手が母や自分のことに気付いていたような気がした。
根拠は一切、なかったが。
それはただ単にそうであって欲しいという、自分の願望の顕れなのかも知れない。