いとしいあなたに幸福を
□01 遠雷-えんらい-
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架々見は少年の仕業かと視線を向けたが――少年は何もしていない。
ましてやその背後に隠れた妹の能力でもないようだ。
「これはっ…!?」
そのとき、少年は架々見の背後から風の能力者の発する光の輝きを見た。
その正体は――
「父さんっ、母さん!!」
架々見の仲間の手に掛かった、兄妹の両親だった。
息子と娘を守るために、最期の力を振り絞って力を行使したのだ。
「悠梨(ゆり)…愛梨を連れて、逃げて…!!」
「このことを、街にいる領主様へお伝えするんだ…っ!!」
父の風が、兄妹の身を優しく包み込む――此処から二人を転移させるつもりだ。
「くっ…小賢しい!!」
架々見が戒めの風を破ろうと抵抗すると、術者である母が苦しげに表情を歪めた。
「お母さんっ!」
「っ…愛梨、悠梨と行きなさい!大丈夫よ、お母さんたちはいつも貴方たちの傍にいるから…っ」
「悠梨…っ行け!!」
父の言葉に少年が頷いて見せると、旋風は兄妹を別の場所へと運び出し始めた。
「お父さん…っいや…!!」