いとしいあなたに幸福を

□01 遠雷-えんらい-
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「愛梨(あいり)!!」

其処に、突然割って入ってきた少年が少女の腕を掴んで、少女に触れようとした男の手を払い除けた。

「なっ…もう一匹隠れてやがった!!」

少年が少女を自分の背に隠し、男たちの前に立ちはだかる。

この少年は少女と良く似た端正な容貌に、同じ色彩を纏っていた。

「お兄ちゃん…!」

「成程な。お兄ちゃんは可愛い妹を助けようと、のこのこ捕まりに出てきてくれた訳か」

「兄妹揃って美形だな、こりゃあ纏めて売り飛ばせば相当な高値がつきそうだ」

男たちの会話を聞いた少女は、不安げに兄の服の裾を握り締めた。

「…心配するな、俺から絶対に離れるなよ」

少年は身構えたまま、深呼吸して後ろ手に妹の掌を握ってやった。

「うん?何をこそこそ喋ってるのかな、仔兎ちゃんたち?」

「どうせ、逃げ場はないんだ。大人しく俺たちに捕まるんだな」

男たちは、じりじりと兄妹との距離を詰める。

壁際まで追い詰められた瞬間、少年が目の前に翳した掌から白い光が勢い良く巻き上がった。

「!」

「っ風の能力だ!!」

男たちが身構えるより早く、部屋中に凄まじい乱気流が巻き起こる。
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