いとしいあなたに幸福を
□01 遠雷-えんらい-
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「――お父さん、お母さん…っ」
幼い少女は、目の前に倒れ伏す両親に縋り付いた。
その姿を見下すように、暗茶髪の男数人が含み笑いを漏らす。
「へっへ…大人しく従えばそんな目に遭わずに済んだのになあ」
「ひどい…あなたたち、一体なに…?」
少女は気丈にも男たちをきっと睨み付けた。
だが、男たちの獲物を狙う獣のような目線に、ぞくりと寒気を感じて後退りする。
「お前らの種族は男女を問わず子供も大人も高く売れるんでねぇ?こうして狩りに来たんだ」
「わ…わたしたちを、売る…?」
俄には信じ難い話を聞かされ、少女は驚愕のあまり桜色の眼を見開いた。
「そうだよぉ、お嬢ちゃん。君のような美人さんなら、その中でもなかなかの高値が付くだろうね」
「…!」
「――どうだ、そっちは」
「よう、架々見(かがみ)。見ろよこの小娘、かなりの上玉だぜ」
不意に現れた架々見と呼ばれた男は、少女を見るなり興味深げに漆黒の眼を細めた。
「ほう…あと五、六年もすれば相当な美人になるだろうな」
「だろ?今までの中でも一番じゃねえか」
少女の父親を手に掛けた大柄の男が、興奮気味に息巻いた。