その他長編

□この胸いっぱいの愛を
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『この胸いっぱいの愛を』第壱話






世は戦国。混沌の中、私は慣れない道をひたすら歩き大阪を目指していた。


事の始まりは立花宗茂の家臣の武将として幾多の戦場を切り抜けた私が、珍しく体調を崩したことからはじまる




「何だ?#name#、体調を崩したのか?それは心配だな…。誰か、急ぎ医者を。」




「いえ、宗茂様、私ごときにもったいのうございます。少し休めば…治りますので…」






とは言ったものの、




「駄目だ。お前に何かあっては俺が寂しい」




と言われ、たじろぐ中、有無を言わさず診察となった。それまでは良かったが…





宗茂は仕事を済ませてくると医者に#name#を任せて席をたち、


その後一通りの診察を終えた医師から衝撃的な一言が発せられた。






「おめでとうございます。ご懐妊ですよ」







え?



「い…ぃ…今なんと?」




「ですから、ご懐妊です。」




「えっ!えっ。エェェッ!」






「今…三月と言ったところですね。きっと、お相手の方もよろこばれましょう」




「お腹に赤ちゃん?」



「ふふっ。そうですよ」




その言葉の後も医者は色々と説明などを話していたが耳に入ることはなく…





と言うか………お相手も喜ぶ?




いやいやいや…言えるわけない!



宗茂様がお相手です。

なんて言ってみなさい…
一端の家臣がお手付きになり、しかもギン千代様より先に身ごもるなんて…




駄目だ。このままじゃ






どうしょう…




どうしょう…








「でわ、失礼します。また、何かありましたら直ぐに知らせて下さい。」





「えっ!あっ。はい。ありがとうございました。」





「はい。お大事に。」






考え事をしているうちに医者は話を終えたようで、去っていった。



気づけば外は暗くなりつつあった。


一人残された私は大きなため息をつく…







「どうしょう。このままじゃ大好きなギン千代様に合わせる顔がない……。」





「それに…何より、宗茂様に沢山迷惑がかかる…」






ギン千代様とは仲が良いし、宗茂との仲も公認ではある。だけど…赤ん坊となると三人だけの問題出はなくなるのだ


宗茂様は婿養子だ。それだけでも大変なのに…

側室でもない女にやや子など……





悩んだ挙げ句、私は置き手紙を残し城を去ることにした。





今すぐなら誰にも気づかれない。





行き先は、大阪。



幸いにも、両親を亡くした私を養女として育ててくれた義理の両親が、今大阪にいる




もともと、主の所に武将として行って欲しいと言ったのも義理の両親である。



だか、主には義理の両親がいる事は明かしていない。だからきっと、追ってはこれまい。




「まぁ、私ごとき居なくなっても、あなた様は…何一つ変わりはしないでしょう…」





寂しく感じながらも、まだ膨らんでいない腹部に手を置き、城をみあげて呟いた。




「ありがとうございました。そして、さようなら。宗茂様…」





愛する宗茂様のため、大好きな奥方様のため、なにより、大事な我が子のために、夜の暗やみ中私は城を後にした。






弐話へ続く
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