私の前を横切るその姿は視線で追うことができない。灯りのない部屋でゆらりと動く晋助さんは何かを読んでいるようで、頭を傾げていた。寝返りを打って、皺の広がる布団に集中する。手のひらをあててみれば温度のないひんやりとした感覚が伝わったので枕から顔を下して同じところに頬もあててみた。「寝たのか」わざと返事をしなかった。顔にかかる髪で私の顔は見えてないだろう。布が沈む音が近づいてくる。晋助さんが私の髪をかき上げて目があった。「月明かりが良い頃合いだな」